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さわかみ生まぐろ直販クラブ

【設立趣意書】


 マグロをはじめ魚群を囲い込んで一網打尽に引き揚げてしまう巻き網漁が、日本では主流となっています。巻き網漁は網でマグロなどの魚体を傷めてしまうだけでなく、極めて効率的な漁法であるが故に、漁獲資源の枯渇化につながっていく恐れが多分にあります。

 和歌山県の那智勝浦港では昭和の初期から巻き網漁船の入港は一切許さず、マグロを一本釣りする延縄(はえなわ)漁法にこだわってきました。それだけマグロという海からの恵みを大切にし、マグロ資源の保全と安定的な確保に努めてきたわけです。その反面、漁師さんたちの収入は低く、高齢化と後継者難という問題からは逃れられません。那智勝浦港を拠点に明治30年創業の「株式会社ヤマサ𦚰口水産」4代目の𦚰口光太郎は、どうすれば持続可能なマグロ漁業を守っていけるかに、長いこと取り組んできました。その心意気や良しとして、さわかみ財団では生マグロの美味しさを一般消費者に直接お届けするサービスを展開していくことにしました。それが、「さわかみ生まぐろ直販クラブ」です。

 広い海を回遊しているマグロですから、収穫する時期も量も一定ではありません。それもあって市場での競り(せり)価格は常に大きく変動し、漁師さんたちの収入は安定しません。ならば、当直販クラブ会員に入荷情報をメール案内し、購入してもらう流れをつくってやれです。中間流通を排除しているが故に、「生マグロの旨さが、こんな値段で」といった驚きでもって、消費者に広く受け入れられると確信します。

 具体的には、その時々で旬のマグロが浜揚げされたときに、良い状態のマグロのみをできるだけ多く𦚰口水産に競り落としてもらいます。漁師さんたちにとっては、揚がったマグロがそれなりの価格で多くさばける。われわれとっては旬のマグロを仕入れることができ、お互いにハッピーです。

 直販の流れは、次の通りです。安く買い取ったマグロを𦚰口水産の工場で順次解体しては、大トロ、中トロ、赤身、切り落としなどの柵を真空パックにしていきます。真空パックはマイナス60度に冷凍しますが、生身のまま冷凍するのとは違って、生マグロの状態を維持できます。

 当直販クラブ会員には、入荷情報をメール案内して、注文を受けます。ご注文に応じた冷凍バッグが、那智勝浦港から各家庭に配送されます。ここで、会員に守ってもらいたい点が、ふたつあります。まず、宅急便は確実に受け取ってもらい、すぐ家の冷蔵庫の冷凍室(できるだけ冷凍室の奥側)に入れてください。保存期間は1週間ですが、しっかり冷凍してもらえればさらに長期間も可能です。

 次に、お召し上がり時には、ヤマサ𦚰口水産が推奨する解凍方法によって、生の状態に蘇ったマグロを食してもらいます。それでもって、那智勝浦港からの生マグロを、本当に美味しく各家庭で堪能していただく直販の流れが完結します。

 当直販クラブは、いずれ1万人を超す会員を擁する大きなものになっていくでしょう。 なにしろ、一般消費者にとっては高級料亭並みの旨さの天然マグロが、びっくりするほどの低価格で堪能できるのですから。そして、それがそのまま那智勝浦の漁師さんたちの収入増と、若い人たちの希望あふれる就職先となっていくことになり、地域経済活性化にも大きく貢献できるのです。もちろん、マグロ資源を大切にする延縄漁を守っていくことにもなります。

澤上篤人

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